電気代の値上げが続いていることから、光熱費に影響する住宅の断熱性能が気になる、という方も多いのではないでしょうか。しかし断熱性能をどのように比べたら良いかは、初めて家づくりをする方にとって、わかりにくいことかもしれません。
そこで今回は新築住宅の購入を検討中の方に向けて、住宅の断熱性能を比べる目安や、断熱性能を高めた家にはどんなメリットがあるかなどを解説します。
断熱性能の目安になる「断熱等級」
住宅の断熱性能を比較する際の目安になるのが、国の定めた「断熱等級」です。より断熱性能の高い住宅を選びたいとお考えなら、この断熱等級を住宅会社に確認すると検討しやすくなるでしょう。
7段階の断熱等級について
断熱等級(正式名称「断熱等性能等級」)は、家のさまざまな性能を比べやすくするために国が定めた「住宅性能表示制度」の中にある等級の一つです。7段階で建物の断熱性能を評価し、等級7が最も高い断熱性能を持つ住宅になります。
注意したいのが2025年4月以降に工事着手する住宅は、断熱等級4に相当する断熱基準の「省エネ基準」への適合が義務化される点です。これは近い将来、断熱等級4以上の住まいが当たり前の時代になることを意味しています。
義務化前に住宅を購入するとしても、断熱等級4以上の住宅を選んだ方が、将来も満足できる住まいを手に入れられるのではないでしょうか。
断熱等級を評価する2つの基準
断熱等級を評価するときは、UA(ユーエー)値とηAC(イータエーシー)値の2つが指標になります。
UA値は室内と外気の熱が、どれくらい出入りしやすいかを意味する「外皮平均熱貫流率」を表す数値です。数値が小さいほど熱が出入りしにくい、断熱性能が高い住宅になります。
ηAC値は、日射の室内への入りやすさを意味する「平均日射熱取得率」を表す数値です。冷房期の指標になり、数値が小さいほど日射が入りにくい住宅になります。
各断熱等級のクリアすべきUA値とηAC値は、地域の外気温の傾向などを考慮し、全国を8地域に分けた「地域区分」ごとに定められています。これにより家を建てる場所の外気温に応じた、適切な断熱等級が評価されるようになっています。
断熱性能の高い住宅のメリット
断熱性能の高い住宅は、次のようなメリットがあります。
一年を通じて快適な温度になる
断熱性能の高い家は一年を通じて快適な温度を保てます。断熱性能が高い家は、外の空気が家の中に侵入しにくくなるためです。また冷暖房の熱が外に逃げるのも抑えるため、室内を快適な温度に保ちやすくなります。
冷暖房の光熱費が削減できる
断熱性能の高い家は冷暖房にかかる光熱費を削減します。家の中の温度が外の暑さや寒さの影響を受けにくく、少ない冷暖房のエネルギーで室内を快適な温度にできるためです。電気料金の値上げのニュースをよく目にする現在、多くの方がこのメリットに関心を持っているようです。
地球温暖化防止に貢献できる
高断熱な家は、冷暖房に使う電気を減らすことで地球温暖化防止に貢献できます。電力会社が作る電気は、多くがCO2を排出する火力発電で作られています。CO2は地球温暖化につながる温室効果ガスの大半を占めており、電気の使用量を減らすことは地球温暖化防止につながるのです。
ヒートショック対策になる
高断熱の家に住むことで、心筋梗塞などの原因になるヒートショック対策ができます。ヒートショックは暖房の効いたリビングから温度の低い脱衣室へ移動したときなど、急激な温度変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患を引き起こす現象です。高断熱の家は部屋間の温度差が少ないため、こうしたヒートショックが起こりにくくなるでしょう。
断熱性能の高い住宅の注意点
断熱性能の高い住宅は多くのメリットがある一方で、次のようなデメリットや注意点があります。
住宅の価格が高めになる
断熱性能の高い住宅は、断熱性能に優れた窓や断熱材を使っているため、価格が高めになる傾向があります。国土交通省の資料(※)によると、断熱等級4に相当する省エネ基準の住宅は断熱等級3相当の住宅より、新築時に約87万円多く費用がかかるという例が紹介されています。
しかし高断熱住宅は住みはじめてからの光熱費を削減できるので、長い目で見るとコストが抑えられるといえます。
※出典:国土交通省「ご注文は省エネ住宅ですか?」
大きな窓が付いていないことがある
高断熱住宅では、大きな窓が付いていないことがあります。窓が大きいと、外気の影響を受けやすくなり、外の暑さや寒さが家の中に侵入しやすくなるためです。特に断熱性能の低い窓を使っている住宅の場合は、窓自体が少ない、大きな窓を付けない可能性が高くなります。高断熱住宅を検討する際は、窓の大きさもしっかり確認するようにしましょう。
断熱性能を高めるには窓が重要
住宅の断熱性能において、家の開口部に付ける窓は重要な役割を担っています。屋根や外壁よりも、夏の暑さが侵入する割合は窓からが最も多いためです。
より断熱性能の高い家を選びたい場合や、大きな窓の付いた家を希望する場合は、できるだけ断熱性能の高い窓を使った住宅を選ぶようにしましょう。
窓の断熱性能はフレームとガラスの枚数による
窓の断熱性能は、ガラスの周囲を囲うフレームの材質と、はめ込むガラスの枚数によって変わります。代表的なフレームの材質には、「アルミ」「アルミと樹脂の複合」「樹脂」の3種類があります。断熱性能は樹脂が最も高く、家の中に外の熱が侵入するのを抑えられます。
フレームにはめ込むガラスは、1枚の「単板」、2枚の「複層」、3枚の「トリプル」があり、枚数が多いほど断熱性能が高くなります。こうした断熱性能の高いフレームやガラスの枚数の多い窓を選ぶと、家の断熱性能を高められるだけではなく、大きな窓を設置することも可能になります。
断熱性能の高い住宅に対する補助金
断熱性能の高い住宅に対し、国は「ZEH支援事業」と「こどもエコすまい支援事業」の2つの補助金を設けています。
・ZEH支援事業
ZEH支援事業では、断熱性能の高い住まいである「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の取得に対し、1戸あたり55万円を補助しています。
公募期間:
1次公募 2023年4月28日〜2023年11月10日
2次公募 2023年11月20日~2024年1月9日
※期間内でも予算上限に達すると受付終了となります。
▼公式サイトはこちら▼
経済産業省及び環境省による戸建ZEH補助事業
・こどもエコすまい支援事業
こどもエコすまい支援事業では、子育て世帯や若者夫婦世帯による、ZEHレベルの省エネ性能を持つ住宅取得に対し、1戸あたり100万円を補助しています。子育て世帯・若者夫婦世帯とは、以下の条件を満たす世帯です。
子育て世帯 | 2022年4月1日時点※で18歳未満の子を有する世帯 |
若夫婦世帯 | 申請時点において夫婦であり、2022年4月1日時点※でいずれかが39歳以下の世帯 |
交付申請期間:2023年3月31日~予算上限に達するまで(遅くとも2023年12月31日まで)
※期間内でも予算上限に達すると受付終了となります。
なお、2023年8月26日時点で予算に対する補助金申請額の割合は86%に達しました。残りの予算が少なくなっているため近日中に受付が終了する可能性があります。補助金を活用した家づくりをご検討の方は早めの申請をおすすめします。
▼公式サイトはこちら▼
こどもエコすまい支援事業
https://kodomo-ecosumai.mlit.go.jp/
断熱性能の高い住宅は住宅ローン控除が優遇される
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅を取得した際に、一定の所得税などが控除される制度です。この制度では住宅の断熱性能によって控除対象になる借入限度額が区分けされ、より高い断熱性能を持つ住宅ほど、多くの借入額が控除対象になるように優遇されています。
また2024年以降、国の定める「省エネ基準」に満たない断熱性能の住宅は、住宅ローン控除が受けられなくなります。これからマイホームを購入する場合は、省エネ基準以上の断熱性能を持つ住宅かをしっかり確認するようにしましょう。
住宅の環境性能等 | 借入限度額 | 控除期間 | |
2022年・2023年入居 | 2024年・2025年入居 | ||
長期優良住宅 低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円※ |
控除区分の基準となる2つの断熱性能
住宅ローン控除の借入限度額を区分する基準のうち、断熱性能である「省エネ基準」と「ZEH水準」について解説します。
・省エネ基準
省エネ基準は2016年に施行された「建築物省エネ法」に基づく断熱基準で、断熱等級4に相当します。2025年4月からは、この省エネ基準に満たない断熱性能の住宅は建築できなくなります。
・ZEH水準
ZEH水準とは、高断熱住宅の規格の一つであるZEHと同等の断熱基準のことです。ZEHは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称で、断熱等級5に相当する断熱性能を持ちます。
断熱性能と設備の省エネ性能を高め、太陽光パネルなどで発電することで、年間のエネルギー消費量の収支がゼロになることを目指します。
まとめ
住宅の断熱性能は、国の定めた断熱等級を目安にすると比較しやすくなります。そしてしっかり比較をして断熱性能の高い住宅を選べば、快適な温度での生活が可能になり、光熱費が削減できるなど多くのメリットが得られます。
またUA値やηAC値の数値や、どのような窓が使われているかにも目を向けると、同じ断熱等級でもより断熱性能の高い住宅を選ぶことができるでしょう。
ヤング開発は、断熱性能が高く、光熱費を大幅に削減できるZEH住宅が標準仕様です。高断熱で住み心地の良い省エネ住宅をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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